
2013年12月12日
ワイルドサイドを歩け
師走の最初の月曜日、星空のきれいな夜に、その訃報は届きました。
MOBY工房の新島富さん。
屈強で、頑固で、心やさしいクラフトマン。
今にも動き出しそうな、伸びやかな形の木彫りの海の生きものたち。
冗談みたいな危なっかしいバランスの見た目で、それでいてどこまでも力強く立つ流木のテーブルや椅子。
どれもこれもひとつとして同じものはなく、それぞれにちがう表情をもっている。
そんな、すばらしい作品たちを作り出してきた、新島さんが、亡くなった。
握手をすると、ぼくなんかの何倍もの力で握り返してくる、新島さんが、亡くなってしまった。
ディスプレイに映る訃報を伝えるメッセージを眺めながら、ぼくは呆然と立ちすくんでしまいました。
ぼくが新島さんに初めてあったのは、もう20年も近く前の、とあるショットバーのカウンター。
端っこの席でインドネシアのタバコをふかしながら、紙袋に入ったちいさな緑の果実をグラスに絞り込んで、苦虫を噛みつぶしたような顔で酒を飲む男、それが新島さんでした。
ちょっと怖い風貌のおじさんだな、と思いながら訝しげにチラチラ視線を送るぼくに、彼は「ホイ」とその紙袋を投げてよこしてきました。
「やる」
「は?」
「シークワーサー」
相変わらずニコリともせずに告げる新島さん。でもその目の奥にはなんだか無邪気な笑いが見えました。
その時からぼくと新島さんのたまにの交流が始まりました。
あるときはカウンターの隣どうし。あるときはぼくがカウンターの中にいて。
新島さんとはいろいろ話をしたけれど、じつはあまり覚えていません。
ぼくはたいてい酔っ払っていたし、彼のお話しはたまに突拍子もなくて、理解しようとがんばってたけどどんどん置いていかれたり。
でもだいたい決まって最後は「だからあんたはだめさー」とニヤリと笑うのです。
ダメサーと言われながらもなんだかガンバレと背中を押された気がして、ほっこりうれしく思ったのが、ほんの昨日のように感じます。
いつも分厚い生地のすてきなシャツを着ていた新島さん。
大野山山林で夜じゅうフクロウと遊んでた新島さん。
お店に来ては「焼酎飲め」といっぱいごちそうしてくれた新島さん。
そのくせお会計を告げると「なにぃ!」とかならず怒ってみせた新島さん。
ありがとう、新島さん。

自分の感性を信じること。
切磋琢磨して技術を磨くこと。
集中すること。
そして「気に入らないことは死んでもやらない」とこだわりぬくこと。
新島さんには、そんなことを教えてもらった気がします。
ボックリーのカウンターに、ピサラの椅子に、ガリンペイロの壁に、あなたの作品は生き続けます。
あなたがいなくなった寂しさには、少しずつ慣れていくでしょう。
でもそれらに触れるたびに、ぼくはあなたを思い出します。
ちょうど時期同じくしてそちらへ行った人の歌じゃないけれど、
小さくまとまってるぼくに、「ワイルドサイドを歩け」って叱ってくれてるようなあなたの姿を。
新島さん、安らかに。
MOBY工房の新島富さん。
屈強で、頑固で、心やさしいクラフトマン。
今にも動き出しそうな、伸びやかな形の木彫りの海の生きものたち。
冗談みたいな危なっかしいバランスの見た目で、それでいてどこまでも力強く立つ流木のテーブルや椅子。
どれもこれもひとつとして同じものはなく、それぞれにちがう表情をもっている。
そんな、すばらしい作品たちを作り出してきた、新島さんが、亡くなった。
握手をすると、ぼくなんかの何倍もの力で握り返してくる、新島さんが、亡くなってしまった。
ディスプレイに映る訃報を伝えるメッセージを眺めながら、ぼくは呆然と立ちすくんでしまいました。
ぼくが新島さんに初めてあったのは、もう20年も近く前の、とあるショットバーのカウンター。
端っこの席でインドネシアのタバコをふかしながら、紙袋に入ったちいさな緑の果実をグラスに絞り込んで、苦虫を噛みつぶしたような顔で酒を飲む男、それが新島さんでした。
ちょっと怖い風貌のおじさんだな、と思いながら訝しげにチラチラ視線を送るぼくに、彼は「ホイ」とその紙袋を投げてよこしてきました。
「やる」
「は?」
「シークワーサー」
相変わらずニコリともせずに告げる新島さん。でもその目の奥にはなんだか無邪気な笑いが見えました。
その時からぼくと新島さんのたまにの交流が始まりました。
あるときはカウンターの隣どうし。あるときはぼくがカウンターの中にいて。
新島さんとはいろいろ話をしたけれど、じつはあまり覚えていません。
ぼくはたいてい酔っ払っていたし、彼のお話しはたまに突拍子もなくて、理解しようとがんばってたけどどんどん置いていかれたり。
でもだいたい決まって最後は「だからあんたはだめさー」とニヤリと笑うのです。
ダメサーと言われながらもなんだかガンバレと背中を押された気がして、ほっこりうれしく思ったのが、ほんの昨日のように感じます。
いつも分厚い生地のすてきなシャツを着ていた新島さん。
大野山山林で夜じゅうフクロウと遊んでた新島さん。
お店に来ては「焼酎飲め」といっぱいごちそうしてくれた新島さん。
そのくせお会計を告げると「なにぃ!」とかならず怒ってみせた新島さん。
ありがとう、新島さん。

自分の感性を信じること。
切磋琢磨して技術を磨くこと。
集中すること。
そして「気に入らないことは死んでもやらない」とこだわりぬくこと。
新島さんには、そんなことを教えてもらった気がします。
ボックリーのカウンターに、ピサラの椅子に、ガリンペイロの壁に、あなたの作品は生き続けます。
あなたがいなくなった寂しさには、少しずつ慣れていくでしょう。
でもそれらに触れるたびに、ぼくはあなたを思い出します。
ちょうど時期同じくしてそちらへ行った人の歌じゃないけれど、
小さくまとまってるぼくに、「ワイルドサイドを歩け」って叱ってくれてるようなあなたの姿を。
新島さん、安らかに。
Posted by ガリンペイロ at 02:37│Comments(0)